後藤伸の日本文学紹介

おすすめの作家を日本一わかりやすく紹介します!

【谷崎潤一郎】80年間の人生の中で、女性の美をとことん追い求めた文豪・谷崎潤一郎!きっとあなたも彼の作品のとりこになるはず!?

f:id:shingototan:20210704151009j:plain

明治・大正・昭和にわたって半世紀以上も活躍した、日本が世界に誇る文豪・谷崎潤一郎。彼の名前を聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか?

今回の記事では、彼の生い立ちから死まで、人柄や意外な一面など、一気にご紹介します。

 

 ・谷崎潤一郎とは

日本のど真ん中で生まれたエリート・谷崎潤一郎のプロフィール

悪魔的?牧歌的?さまざまな女性の美を描いた谷崎潤一郎の傑作小説をご紹介

まとめ

 

 

谷崎潤一郎とは】

戦後の日本を代表する作家・三島由紀夫や、昨年芥川賞を受賞したばかりのアイドル小説『推し、燃ゆ』の現役女子大生・宇佐美りん氏の「推し」である中上健次など、多くの作家に影響を与えました。まさに日本の文学を代表する文豪なのです。

川端康成大江健三郎、ロックシンガーのボブディランなどが受賞したことでも有名なノーベル文学賞にも何度もノミネートされるなど、正真正銘、日本が誇る文豪といえますね。

また、日本の伝統を大切にし、食にもこだわっていたという谷崎潤一郎には、グルメだという意外な一面もありました。

彼は甘いものが好きで、小説やエッセイの中でも、果物や羊羹について何度も書いています。

中でも小説『吉野葛』の中には、柿についてはなみなみならぬ記述も見られます。

 

「八百屋の店先に並べてある柿が殊に綺麗であった。キザ柿、御所柿、美濃柿、いろいろな形の柿の粒が、一つ一つ戸外の明かりをそのつやつやと熟し切った珊瑚色の表面に受け止めて、瞳のように光っている。」

 

(―新潮社『吉野葛

www.shinchosha.co.jp

より)

 

いかがでしょう、柿への愛情が感じられるような表現ですね。

もし彼が現代に生きていたら、きっとタピオカはもちろん、人気急上昇中のイタリア発祥のお菓子、マリトッツォなんかもきっと大好きになっていたはず。

そんな意外な一面を持つ谷崎潤一郎は、小説だけではなく、戯曲、エッセイや講演、さらには日本の古典文学の最高傑作とも言われる『源氏物語』の翻訳など、様々なフィールドで活躍しました。

作家として非常に優れていた谷崎ですが、私生活はどのようなものだったのでしょうか?

次章では、世界に誇る文豪・谷崎潤一郎の生涯をざっくりとご紹介します。

 

【日本のど真ん中で生まれたエリート・谷崎潤一郎のプロフィール】

f:id:shingototan:20210704162012j:plain

谷崎潤一郎1886年明治19年)7月24日、現在の東京都中央区日本橋人形町一丁目に生まれました。

学生時代の谷崎は学業優秀でした。飛び級扱いで現在の東京大学の前身である旧制一高に進学、卒業後は東京帝国大学に。いわゆるエリートですね。ちなみに4歳下の弟・精二も作家・英米文学者として早稲田大学の教授を務めるほど人物となっています。

学生時代から小説を発表しはじめ、順調に作家として人生を歩んでいく谷崎でしたが、30代から40代にかけては当時の妻だった千代子をめぐって、作家仲間の佐藤春夫と泥沼な三角関係に陥り、結局は佐藤に妻を奪われてしまいます。その後、何度も引っ越しや再婚を繰り返すなど、常識では考えにくい、豪華な文豪らしい生活を送ることになります。

引っ越しはもちろん、恋愛だって意外とお金がかかるものですよね。作家としての地位を着実に築いていた谷崎、やはり相当なお金があったのでしょうか。羨ましい限りですね?

また、晩年には日本人で初めて全米芸術院アメリカ芸術文学アカデミー名誉会員に選ばれるなど、名実ともに日本を代表する作家の地位に上りつめます。

そして1965年(昭和40年)7月30日、臓器不全のためこの世を去りました。享年80歳でした。

彼の死後50年以上が経った今でも、本屋さんには彼の書いた小説が数多く並んでいることからも、いかに優れた作家だったかがわかりますね。

次章では、そんな谷崎潤一郎が残した数多くの作品の中から、代表的な作品をいくつかご紹介したいと思います。特に、女性関係の揉め事に悩まされた谷崎潤一郎の描く小説の、女性の美しさは必見です!

 

悪魔的?牧歌的?さまざまな女性の美を描いた谷崎潤一郎の傑作小説をご紹介】

女性の美しさを表現することを徹底的に追究した谷崎潤一郎は、古典的な題材の作品から時代を切り取った斬新な作品まで、次々と世に送り出しました。

そんな彼の作品から、厳選して2作をご紹介します。

1作目は痴人の愛です。

www.shinchosha.co.jp


この小説は、1924年大正13年)3月から6月まで『大阪朝日新聞』に連載され、一度中断し、数ヶ月後に再び雑誌『女性』11月号から翌1925年(大正13年)7月号まで掲載された、連載小説です。以下にあらすじを引用します。

「彼女に踏みにじられたい、そんな欲望が君の心の奥底にもひそんでいるはずだ!」

きまじめなサラリーマンの河合譲治は、カフェでみそめて育てあげた美少女ナオミを妻にした。河合が独占していたナオミの周辺に、いつしか不良学生たちが群がる。成熟するにつれて妖艶さを増すナオミの肉体に河合は悩まされ、ついには愛欲地獄の底へと落ちていく。性の倫理も恥じらいもない大胆な小悪魔が、生きるために身につけた超ショッキングなエロチシズムの世界。

 

(―新潮社“

https://www.shinchosha.co.jp/book/100501

”より引用)

 

まさに現代の、いや大正時代の光源氏。いや、今だったら「不謹慎だ!」とSNSで叩かれそうな、変態的な関係ですね。

それにしても、こんなにエロティックでハレンチな怪しい男女の関係を描いた小説が連載されていたなんて、当時の新聞はなかなかに過激だったのですね。不倫などの恋愛ゴシップの尽きない芸能界のタレントさんたちにも、ひょっとしたらこんな関係があったりするのかもしれない、なんて妄想してしまうと、なんだかドキドキしませんか?

 

2作目は長編小説細雪です。

www.shinchosha.co.jp

この小説は雑誌『中央公論』に連載予定で掲載されたのですが、時代は1943年(昭和18年)、太平洋戦争の最中。華やかな暮らしを描いた内容が「不適切だ」という理由で、当時の軍部から圧力をかけられ、連載は中止させられました。

以下にあらすじをご紹介します。

 

大阪船場に古いのれんを誇る蒔岡家の四人姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子が織りなす人間模様のなかに、昭和十年代の関西の上流社会の生活のありさまを四季折々に描き込んだ絢爛たる小説絵巻。

 

(―新潮社“

https://www.shinchosha.co.jp/sp/ebook/E021291/

より引用)

 

ワインやチーズを楽しむ姿をはじめ、ピクニックに出かけるシーンもあるので、グルメ小説として読んでも面白い小説です。

四季折々の日本の美しい風景やイベント、変わりゆく都市に生きる人々の姿を繊細に描いた人間絵巻

太平洋戦争中の日本で、発表を弾圧されながらも書き続け、およそ5年以上もの歳月を費やして完成した、まさに作家としての執念がこもった長編小説。

現代の日本の息苦しさの中でぜひ読む価値のある傑作です。

 

他にも処女作として谷崎の名を文壇に知らしめた短編『刺青』や、女性同士の恋愛を当事者の独白というスタイルで描いて話題となった『卍』、盲目の美女・春琴とその家に仕える奉公人・佐助の人間模様を独自の文体で物語る『春琴抄』など、世紀を越えた名作がたくさんあります。あなたもぜひお気に入りの小説を見つけてください。

 

【まとめ】

さて、いかがだったでしょうか?

谷崎潤一郎の小説や人物像について、おわかりいただけたでしょうか。

学校の教科書にも登場する文豪・谷崎潤一郎は、実はスキャンダラスな恋愛や官能的な性の世界も得意とする、ジャンルにとらわれない人気エンターテイメント作家だったのです。

なかなか遊びに出かける気分になれないときには、読書をして文豪の世界観にどっぷりハマってみませんか?