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【後藤伸おすすめ】変幻自在の小説家・長野まゆみワールドをご紹介!一度ハマれば虜になること間違いなし。

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今回は神秘的、そして官能的でさえある独自の世界観を構築し、現代小説のシーンを代表する小説家・長野まゆみをご紹介します。

作家として30年以上活躍するキャリアを持ち、長野ワールドとも称される独自の作風で不動の地位を築いた長野まゆみそのミステリアスな小説世界は、まるで万華鏡を覗き込んでいるような美しさ・不思議さ!あなたもきっと魅了されるはずです!



【変幻自在の作家・長野まゆみのプロフィールから推し作品まで、徹底解説!】

まずは、独創的な小説世界で熱狂的なファンを魅了する長野まゆみさんの略歴をご紹介します。

長野ワールドとも表現される独特の世界観や小説の特徴などは次章以降、詳しくご説明するとして、まずは基本的な部分をおさらいしていきましょう。

 

長野まゆみさんは1959年8月13日生まれ、東京都出身です。小学生の頃に漫画家・竹宮惠子さん『空がすき!』に衝撃を受け、『トーマの心臓』の萩尾望都さんにもどハマりしたそうです。

竹宮惠子さんも萩尾望都さんも、いわゆる「花の24年組」ですね。この「24年組」には『レベレーション(啓示)』で話題となった山岸凉子さんや映画化・ドラマ化された話題作『グーグーだって猫である』の大島弓子さんなど、そうそうたるメンバーが揃っていますね。

他にも作家・稲垣足穂に傾倒するなど、少年愛の世界にどっぷりのめり込んでいくことに。

 

今で言うところの、いわゆるボーイズラブ、BL文化ですね。今でこそ市民権を得たBL文化ですが、当時はまだまだマイナーだったようです。腐女子腐男子がこうしてBL文化を堪能できているのも、「花の24年組」や長野まゆみさんなど、多くの先人のおかげだと言えますね。ありがとうございます!

 

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実際、最上もがさんのようにBL好きを公言するタレントさんも増えてきていて、年々BLは世間に受け入れられつつありますね。ちなみに筆者の最推しBL漫画は、紀伊カンナさんの『海辺のエトランゼ』『春風のエトランゼ』シリーズです。

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ちなみにこちらの漫画は、2020年に劇場アニメ化されて評判を呼んだ人気作品でもあります。村田太志さんや松岡禎丞さんなど、人気声優さんがキャストを務めていますので、あわせてチェックしてみてください。期間未定ですが、本編冒頭の映像も無料でご覧いただけますよ。

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さて、そうして少年愛、いわゆるBLに目覚めた少女時代を送った長野まゆみ氏ですが、大学は女子美術大学に進学します。芸術学部でデザインを学んだ経験を活かし、作家になってからはご自身の作品の表紙をデザインするなど、多彩な活躍を見せます。

 

そして大学卒業後は、デパート勤務やデザイナーなどを経て、1988年、『少年アリス』で第25回文藝賞を受賞し、小説家としてデビューを果たします。また、デビュー作『少年アリス』は第2回三島由紀夫賞の候補になるなど、デビューして早速注目されていたことがわかりますね。

 

ちなみにこの年の三島由紀夫賞の受賞作は大岡玲『黄昏のストーム・シーディング』ですが、候補作には長野まゆみの他に、近年ヒップホップ文化に脚光を当てているタレントとしても注目されている、いとうせいこうノーライフキング』や、佐藤泰志『そこにのみにて光り輝く』などが挙げられていました。佐藤泰志は1990年に41歳の若さでこの世を去った後、2000年代に入ってから再評価され、同作の他にも『海炭市叙景』や『オーバー・フェンス』など、数多くの作品が映画化されるなど、最注目されている作家です。素朴な文体に宿る力強いリズムや、登場人物たちの人生に宿る悲哀が、ひしひしと迫ってくる世界観が特徴です。

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あまり世間には知られていませんが、こちらも筆者イチオシの作家ですので、映画とともにぜひチェックしてみてください。

オダギリジョーさんや蒼井優さん、松田翔太さんなど実力派俳優が多数出演しています。

www.kaitanshi.com

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デビュー当初から大きく注目されることとなった長野まゆみ氏ですが、その後もめきめきと活躍を続けます。

また、自身の作品から名を取った有限会社・耳猫風信社を立ち上げ、鉱石(長野さんは鉱石好きとしても知られています)や耳猫風信社オリジナル品の販売なども行っています。現在は、耳猫風信社ウェブサイトでの通信販売のみ、行っているようです。その他にも、自身のデザイナーとしての能力も発揮して、画廊を貸切ってイベントを行うなど、精力的な活動でも知られています。

 

小説執筆のほかにもマルチな才能を発揮する長野まゆみさんですが、次章では、そんな彼女の小説の特徴をご紹介します。



【幻想的な世界とBL的要素を融合させた美と官能の長野ワールド!】

 

数多くの作品を発表し、これまで様々な評判を獲得してきた長野まゆみ氏ですが、ひときわ大きな評判を呼んだのが、2015年の『冥土あり』での第43回泉鏡花文学賞と第68回野間文芸賞のダブル受賞です。

その幻想的・神秘的な、不思議な長野ワールドを展開している作風は、同じく幻想的な世界観を描くことで知られる稲垣足穂泉鏡花にも比較されるほど、完成度の高いものとして評判が高いのです。

 

作中にはどこかノスタルジックな街の風景や、様々な調度品が登場します。日本古来の骨董品や、ビロードの絨毯など、現代では小説でもなかなかお目にかかれない言葉が贅沢に使われていることも、作品世界の世界観に重要な役割を果たしています。

 

例えば、ライターを「発火石」、ノートを「筆記帳」と表記するなど、ノスタルジックでどこか現実離れしたムードを言葉選びのレベルで表現しているのです。

 

デビュー作『少年アリス』も、少年が不思議な夢の世界に迷い込むストーリーが、読者をも現実離れした世界に誘うと、高い評価を受けています。

また、御伽噺のようなストーリーだけではなく、その文体、表現力にも注目です。

初めての読者は、上記のような独特の漢字表現や旧字体に面食らうかもしれません。しかし、読み進めていくうちに、そうした独特の言葉のチョイスとリズムの良い文章にいつしか引き込まれていることでしょう。ストーリーだけでなく、文章そのものまでもが不思議な魅力に満ちているのです。

 

長野まゆみさんの作品には、そうした神秘的・幻想的、そしてノスタルジックな世界観という特徴の他に、もう一つ大きな特徴があります。ここまでお読みいただいた読者の方はもうお気付きですね?

そうです、もう一つの大きな特徴。それは少年愛、つまりBL的要素です!

デビュー作『少年アリス』から一貫したテーマとして、長野まゆみさんの作品には、容姿端麗な線の細い美少年(注:筆者の妄想も混じっています)と年上の男との交流が描かれています。

美少年が恋心を持つこともしばしば。

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例えば、連作短編集『レモンタルト』では、少年ではないものの、主人公の青年と、今は亡き自身の姉の旦那である義兄が、遺された一軒家に二人で暮らす日々の物語です。

この作品は、淡々としていながらどこかぬくもりのある文体で、主人公が義兄に抱く恋愛感情が描かれています。また、主人公のもとに持ち込まれるミステリアスな面倒ごとを解決していくストーリーにもなっているので、「ほのぼの日常ミステリ」としても読める、不思議な空気感がクセになる一作ですよ。

 

ちなみに、いわゆるBL、ボーイズラブの雰囲気漂う作品を発表している作家さんといえば、ほかに三浦しをんさんの名前が思い浮かびますね。

舟を編む』など、映画化された作品もある三浦しをん氏の作品ですが、筆者の個人的なオススメは『月魚』です。なぜかと言いますと、それはですね……読者の皆さんのご想像にお任せします(笑)

というのは冗談としても、読んでいただければきっと筆者オススメの理由がわかってもらえるはずです……(笑)

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【これぞ長野まゆみワールドの真骨頂!?魅惑の美と官能の世界をご紹介!】

さて今回は、ここまで筆者の独断と偏見、時々性癖を織り交ぜて解説してきましたが、ここで読者のみなさんに読んでいただきたい長野まゆみ氏の極上小説をご紹介したいと思います。

生半可なBL漫画よりもはるかに興奮……じゃない、心に染み入る魅力の一作ですよ。

 

『雨更紗』

主人公はとある地方の旧家に出入りする高校生の美少年。周囲の人間に、自分と瓜二つだと言われる従兄弟を訪ねて旧家に出入りするのですが、なかなか会えない二人……。

美しい文章を読み進めていくうちに、様々なピースが浮かび上がってきて、少しずつ全体像が見えるようになっていく、そんな不思議な物語です。

女性のファンが非常に多いことでも知られる長野まゆみ氏ですが、実は筆者もこの作品をとある小説好きの女性からオススメされたのがきっかけで読みました。感想としては、女性はもちろん男性でもとってもハマれる小説でした。小説好きならまさに垂涎間違いなしの名作ですので、この文章を読むのなんて止めて、今すぐチェックしてほしいくらいです!(笑)

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実際、発表当時には沼野充義氏をはじめ、川村湊氏や大庭みな子氏など、名だたる作家たちが書評を寄せるほど、大きな話題を呼んだ作品となりました。河出書房新社から刊行された単行本の帯には、そうした書評を指して、「各紙誌絶賛の異色作!」との文言があることからも、いかに注目されていたかがわかりますね。

 

【まとめ】

いかがでしたか?

神秘的な独自の小説世界を構築するとともに、近年話題沸騰のBL的な要素も色濃く表現している長野ワールドについて、筆者の情熱そのままにお届けしました。読者の皆さんが、これをきっかけに長野まゆみさんのファンになってくだされば幸いです。もちろん、BLに目覚めてくださっても……(笑)